· 

消費者被害の研修

 現在、全4回の消費者被害についての研修を受けてます。本日は2回目でした。消費者契約法や割賦販売法、特定商取引法など、普段の業務では耳慣れない法律を使って、悪徳商法による被害を受けている方の救済を目指します。

 

 本日は「特定商取引法」をメインテーマにした内容でした。講師は、弁護士の池本誠司先生。非常にわかりやすく、丁寧に教えていただきました。時間が足りず、もっとお話を聞かせていただきたかった、というのが正直な感想です。

 

 国民生活センターの発表によると2016年度の相談のうち36.6%が通信販売(≒インターネット)に関するものということで、先生も、ネット通販の被害相談が多いとおっしゃっていました。

 

 通信販売については、クーリングオフが認められていないところ、特商法15条の3において、8日間の解約返品が可能となります。ただし、解約について特約がある場合(例えば解約期間を2日とする、など。)は、その特約が優先します。特約があった場合に特約が優先してしまうところが、クーリングオフとの違いです。

 

 特商法15条の3 通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該特定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間はその売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合(当該売買契約が電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成十三年法律第九十五号)第二条第一項に規定する電子消費者契約に該当する場合その他主務省令で定める場合にあつては、当該広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であつて主務省令で定める方法により表示していた場合)には、この限りでない

2 申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする。

 

 解約返品ができそうもない場合は、特商法14条1項2号からの施行規則16条により、申込画面と確認訂正画面の設定があるかどうかを確認し、無い場合は、電子消費者契約特例法3条による民法95条ただし書き適用除外を使って、民法95条錯誤無効の主張をする。

 

 特商法14条 主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第十一条、第十二条、第十二条の三(第五項を除く。)、第十二条の五若しくは前条第一項の規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該違反又は当該行為の是正のための措置、購入者又は役務の提供を受ける者の利益の保護を図るための措置その他の必要な措置をとるべきことを指示することができる。
一 通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約に基づく債務又は通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の解除によつて生ずる債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させること。
二 顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として主務省令で定めるもの
三 前二号に掲げるもののほか、通信販売に関する行為であつて、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの
 (2項以下省略)
 施行規則16条 法第十四条第一項第二号の主務省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
一 販売業者又は役務提供事業者が、電子契約(販売業者又は役務提供事業者と顧客との間で電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信技術を利用する方法により電子計算機の映像面を介して締結される売買契約又は役務提供契約であつて、販売業者若しくは役務提供事業者又はこれらの委託を受けた者が当該映像面に表示する手続きに従つて、顧客がその使用する電子計算機を用いて送信することによつてその申込みを行うものをいう。この号及び次号において同じ。)の申込みを受ける場合において、電子契約に係る電子計算機の操作(当該電子契約の申込みとなるものに限る。次号において同じ。)が当該電子契約の申込みとなることを、顧客が当該操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこと。
二 販売業者又は役務提供事業者が、電子契約の申込みを受ける場合において、申込みの内容を、顧客が電子契約に係る電子計算機の操作を行う際に容易に確認し及び訂正できるようにしていないこと。
三 販売業者又は役務提供事業者が、申込みの様式が印刷された書面により売買契約又は役務提供契約の申込みを受ける場合において、当該書面の送付が申込みとなることを、顧客が容易に認識できるように当該書面に表示していないこと。
 電子消費者契約特例法3条 民法第九十五条ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤がのいずれかに該当するときは、適用しないただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない
一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。
 
 つまり、通信販売において、最低2回(申し込み+確認)はクリックしたかどうか、ということです。1回クリックして
業者「はい、申し込み完了。請求金額○○円。」
消費者「そんなつもりはなかった。錯誤だ。」
業者「いいや、画面の下の方に『このクリックで申し込み完了』と書いてあっただろ。読まなかったのは重過失だから錯誤は使えない。」
というときに、電子消費者契約特例法3条が機能して、95条ただし書き重過失規定の適用が無くなり、錯誤の主張ができるようになるということです。
 ん~、ややこしい。しかし、便利です。
  
 
 さて、解約返品権も使えず、クリックも2回した。しかし、どうも思っていたような物ではなかった。病気が治ると書いてあったのに、まったく効果を感じない。こんなケースもあると思います。このような場合は、消費者契約法4条1項1号による不実告知の取消しが検討されます。
 消費者契約法4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
 (2項以下省略)
 
 問題は、通信販売における広告が「勧誘」にあたるかどうか。これについては、平成29年1月24日最高裁判決内で「『勧誘』に当たらないとして…除外することは…相当とはいい難い。」とされました。同判決は新聞広告でしたが、ネットも同じように解釈できる余地があると思われます。この辺は弁護士案件になってきそうです。
 
 
 では、司法書士として何ができるのか?
 これは悩ましいですね。まず、140万円以内であれば「7号相談業務」として、アドバイスを送ることは問題ないように思います。しかし、司法書士の裁判外での代理人交渉は「和解」が前提なので、代理人として「取消し」たり「解除」したりするのは危険な気がします。ご相談をいただいたら、ご本人名義で通知や内容証明(作成のサポートは問題ないように思います。)を送ってもらうほうがいいでしょう。そして、支払った金銭がなければ請求が続くか様子を見て、もし、すでに支払った金銭があり、返金請求となれば、その金額が140万円以下であれば、代理人となって、訴訟を視野に入れながら裁判外で和解交渉もできる。こんな感じでしょうか。
 知識を増やして、誰かの力になれる場面が増えればいいなと思います。騙そうとする人間より、騙された人を何とかしようとする人間の方が多ければいいなと思います。次回は割賦販売法を勉強します。