75 居住用不動産の処分の許可っておりないものですか?

 

 私の経験した事案では全部許可が出ていますし、周囲の方の話を聞いても、許可が出なかった話は聞いたことがないです。もちろん、後見人の裁量を逸脱していると思われるような取引であったり、取引金額が不当と判断されたり、その他何らかの理由で許可が出ないことは充分考えられます。ざっくり言ってしまえば、正当な目的で正当な取引であれば問題なく許可が出るでしょうし、やましい目的や不当な取引であれば許可されないでしょう、という当たり前と言えば当たり前の話ですね。

 

 で、何を持って「正当」とするかですが、そここそ後見人が考えるべきことであって、裁判所に対して、後見人が「正当」と判断した「根拠」を説明できるか、説明をして納得を得られるか、という視点が重要と思います。

 

 私自身は「必要性」「相当性」「本人の状況」「本人の意向」というような点を検討します。

 それをそのまま処分の許可申立書に書いています。

 1 必要性 ・・・・。

 2 相当性 ・・・・。

 3 本人の状況 ・・・・・。

 4 本人の意向・・・・。

 そして、最後にまとめています。

 

 東京家裁の後見レポートvol.27の4に記述がありますのでご参考までに。(色は私が付けました。)

 「4 本人の居住用不動産を処分するときは、居住用不動産の処分許可申立てをする

 成年後見人は、本人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地を処分するには、 家庭裁判所の許可を得なければなりません。本人にとって、居住環境が変われば、その心身や 生活に重大な影響が生じることになります。そこで、これらの処分については、特に慎重を期 すため、裁判所の事前の許可を得なければならないとされています。

 そのため、例えば、居住用不動産を売却するとして、居住用不動産の処分許可を求めるとき には、本人の心身に与える影響(例えば、本人の帰住見込みはあるのか、今後の生活の本拠が 確保されているのか、本人の意向はどうなのかなど。)、財産管理面からみた処分の必要性(例 えば、本人の資産状況、収支状況、今後本人に必要とされる費用、管理 コストなどから、現時点において処分する必要があるのかなど。)、相 当性(例えば、本人が受ける不利益の程度、売却価格の相当性など。) について、申立書に具体的に記載してください。なお、不動産の売却の 許可を求めるときには査定書等価格の相当性を裏付ける資料も忘れず に提出してください。

 また、「処分」には本人の不動産を売却するだけではなく、都営住宅の返還や、本人の不動産 に対する賃貸借(使用貸借)の設定、解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分などが 含まれます。例えば、親族後見人が、本人の所有する古い建物を解体し、本人との同居を前提 とした建物を新築しようと考え、ただ建築資金は本人の所有する土地に抵当権を設定して金融 機関から借り入れることとした場合には、本人の建物の解体と本人の土地に対する抵当権の設 定の2つの許可が必要になります(さらに、本人の土地の使用権の設定についての許可が必要 な場合もあります。)。そのため、建築計画を立てても裁判所の許可が得られず、計画が頓挫す る場合がありますので、計画を進める前に事前に連絡票で裁判所に連絡してください。」

 https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/kouken/030227.pdf