おはようございます。
後見センターレポートvol.23が、7月29日に公開されました。
同レポートは、東京家裁後見センターが不定期に発出するもので、実務に関するお知らせや、注意喚起を促すものです。
今回のレポートの内容は、「後見人の『裁量』について」です。
裁量については、同レポートのvol.16においても取り上げられています。
とても重要なものだと思いますので、こちらに両方のレポートを貼っておきます。
今回出されたもの(23)↓
16がこちら↓
お読みいただいた感想はいかがでしょうか。
後見人の口から「どうしたらいいですか?」という言葉は、原則として、出すべきではない、と言ったら言い過ぎでしょうか。
どうしたらいいかは、後見人こそが考えるべきで、その思考や結論には広い裁量があります。
しかし、解任されるような行為は許されません。
過去に受けた裁判官による研修では、同じことを次のような表現で説明していました。
課題に対して取りうる手段がA~Dまであった場合において、A~Cが許容レベルでDは許容されないレベルであれば、後見人がA~Cのいずれかを選択すれば問題がなく、Dを選択した場合にだけ裁判所がストップをかける。
これを、もう少し具体的に考えてみたいと思います。
以下は、私が考えたケースです。
裁判所やリーガルサポートとは無関係です。
【私が考えたケース】
本人の資産50万円
本人が、孫の出産祝いで10万円を贈与したいと言っている。
A 本人の希望どおりに10万円を贈与する
B 本人の資産を考えて5万円に減額して贈与する
C 本人の資産を考えて贈与しない
D 50万円を贈与する
いかがでしょうか。
Dは明らかに間違った判断、解任レベルですよね。
本人の希望を越えて全資産を贈与してしまうのは、本人のためになるはずがありません。
一方で、A~Cについては、どれか一つだけが正解とはいえないと思います。
Aの場合、贈与し過ぎのようにも思えます。
しかし、Aが110歳で、最後の希望だと言ったらどうですか?
あるいは、Aの月間収支が、+10万円の場合はどうですか?
過去に孫9人の出産祝いとして毎回10万円贈与していた場合はどうですか?
そういう場合は、問題のない贈与と考える余地が十分にあるように思います。
同じように、BもCも取りうる選択肢ですね。
しかし、どう考えてもDはありえません。
私はそう思います。
したがって、A~Cのどれを選択するかは、まさに後見人が判断・決断すべきことで、どうしても不安であれば、後見人がA~Cのいずれかを選択したうえで、裁判所に連絡票を入れて照会をかけるべきでしょう。
裁判所に連絡票を入れる際のポイントは、後見人の選択とその理由を書くことです。
これを書かずに、A~Cのどれがいいですか?という聞き方は、後見人としての職務を果たしていないことになります。
だらだらと偉そうに書いてきましたが、現実では、日々迷いますし、本当にこれでいいのかなと思うことはあります。
迷ったら、まずは関係者の話をよく聞くことではないでしょうか。
私はそう思います。