おはようございます。
5回目の朝です。
今日は、遺言者死後の話です。
気の遠くなるような、なが~い条文が待ってます。
いってみましょう。
(遺言書情報証明書の交付等)
第九条 次に掲げる者(以下この条において「関係相続人等」という。)は、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている遺言書(その遺言者が死亡している場合に限る。)について、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面(第五項及び第十二条第一項第三号において「遺言書情報証明書」という。)の交付を請求することができる。
遺言者情報証明書の交付を請求できるのは、遺言書の死後だけです。
一 当該遺言書の保管を申請した遺言者の相続人(民法第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び相続の放棄をした者を含む。以下この条において同じ。)
遺言者の相続人、欠格者、廃除者、放棄した者も請求できます。(!)
二 前号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者又はその相続人(ロに規定する母の相続人の場合にあっては、ロに規定する胎内に在る子に限る。)
イ 第四条第四項第三号イに掲げる者
→ 受遺者又はその相続人
ロ 民法第七百八十一条第二項の規定により認知するものとされた子(胎内に在る子にあっては、その母)
→ 遺言で認知された子(胎児の場合は、その母)
ハ 民法第八百九十三条の規定により廃除する意思を表示された推定相続人(同法第八百九十二条に規定する推定相続人をいう。以下このハにおいて同じ。)又は同法第八百九十四条第二項において準用する同法第八百九十三条の規定により廃除を取り消す意思を表示された推定相続人
→ 遺言で廃除の意思表示をされた推定相続人又はその相続人、遺言で廃除を取り消す意思を表示された推定相続人又はその相続人
ニ 民法第八百九十七条第一項ただし書の規定により指定された祖先の祭祀を主宰すべき者
→ 遺言者に指定された祖先の祭祀を主宰すべき者又はその相続人
ホ 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)第十七条の五第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者又は地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)第三十七条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
→ ようするに・・・
①国家公務員のうち特別職ではない職員が、
②遺族補償一時金の受取人について、
③遺言又はその者の属する実施機関の長に対する予告で、
④その職員の収入で生計を維持していた子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹以外の者及びその職員の収入によって生計を維持していない子、父母、祖父母及び兄弟姉妹のうち、
⑤特に指定した者又はその相続人
地方公務員の場合も同じような規定です。
読みながら訳が分からなくなる日本語…
ヘ 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受益者となるべき者として指定された者若しくは残余財産の帰属すべき者となるべき者として指定された者又は同法第八十九条第二項の規定による受益者指定権等の行使により受益者となるべき者
→ 遺言信託がされた場合の、受益者又はその相続人、残余財産の帰属すべき者又はその相続人、遺言によって行使された受益者指定権に基づく受益者又はその相続人
ト 保険法(平成二十年法律第五十六号)第四十四条第一項又は第七十三条第一項の規定による保険金受取人の変更により保険金受取人となるべき者
→ 遺言による保険金受取人の変更により受取人になった者又はその相続人
チ イからトまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
→ 政令 第七条
法第九条第一項第二号チの政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)以外の法令において引用し、準用し、又はその例によることとされる同法第十七条の五第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
二 災害救助法施行令(昭和二十二年政令第二百二十五号)第十三条第三項の規定により遺族扶助金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
三 警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律施行令(昭和二十七年政令第四百二十九号)第十条の五第三項の規定により遺族給付一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
四 海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律施行令(昭和二十八年政令第六十二号)第十一条第三項の規定により遺族給付一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
五 非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令(昭和三十一年政令第三百三十五号)第九条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
六 公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償の基準を定める政令(昭和三十二年政令第二百八十三号)第十三条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
七 証人等の被害についての給付に関する法律施行令(昭和三十三年政令第二百二十七号)第十二条第三項の規定により遺族給付一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
八 前各号に掲げる者のほか、これらに類するものとして法務省令で定める者
結局、省令行くんかーい
→ 法務省令 第四十七条
令第七条第八号の法務省令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第四十三条第二項の規定により遺族補償を受けることができる遺族のうち特に指定された者
二 船員法施行規則(昭和二十二年運輸省令第二十三号)第六十三条第二項の規定により遺族手当を受けることができる遺族のうち特に指定された者
三 ハンセン病問題の解決の促進に関する法律施行規則(平成二十一年厚生労働省令第七十五号)第九条第二項第八号の規定により指定された特定配偶者等支援金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
はい、わかりました。
色々な人が請求可能と覚えておいて、個別に当てはまるか検討しましょう。
三 前二号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者(←「又はその相続人」がないので注意!)
イ 第四条第四項第三号ロに掲げる者
→ 遺言執行者です
ロ 民法第八百三十条第一項の財産について指定された管理者
→ 無償で子に与えられた財産についての指定管理者
ハ 民法第八百三十九条第一項の規定により指定された未成年後見人又は同法第八百四十八条の規定により指定された未成年後見監督人
→ 遺言で指定された未成年後見人又は遺言で指定された未成年後見監督人
ニ 民法第九百二条第一項の規定により共同相続人の相続分を定めることを委託された第三者、同法第九百八条の規定により遺産の分割の方法を定めることを委託された第三者又は同法第千六条第一項の規定により遺言執行者の指定を委託された第三者
→ 遺言で指定された、共同相続人の相続分を定めることを委託された第三者、遺産の分割の方法を定めることを委託された第三者、遺言執行者の指定を委託された第三者
ホ 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第七十五条第二項の規定により同条第一項の登録について指定を受けた者又は同法第百十六条第三項の規定により同条第一項の請求について指定を受けた者
→ 遺言によって指定された、遺言者が無名又は変名で公表した著作物についての実名登録を受ける者
遺言によって指定された、著作権侵害に関する差止請求や名誉回復等の措置を請求する者
ヘ 信託法第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受託者となるべき者、信託管理人となるべき者、信託監督人となるべき者又は受益者代理人となるべき者として指定された者
→ 遺言信託によって指定された、受託者、信託管理人、信託監督人、受益者代理人
ト イからヘまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
→ 政令 第八条
法第九条第一項第三号トの政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第百十六条第二項ただし書の規定により同条第一項の請求についてその順位を別に定められた者
→ 遺言によって請求権者としての順位を別に定められた、著作権侵害に関する差止請求や名誉回復等の措置を請求する者。
二 前号に掲げる者のほか、これに類するものとして法務省令で定める者
また、省令行くんかーい。
でも・・・見当たらない。
2 前項の請求は、自己が関係相続人等に該当する遺言書(以下この条及び次条第一項において「関係遺言書」という。)を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
遺言書情報証明書の交付の請求はどこの遺言書保管所のホカンカンに対してでもできます!
3 関係相続人等は、関係遺言書を保管する遺言書保管所の遺言書保管官に対し、当該関係遺言書の閲覧を請求することができる。
この3項ですが、2項と書き方が違うので、現に保管していない遺言書保管所には閲覧の請求ができないと思うじゃないですか。でも、違うんです。政令9条をご覧ください。(特に2項)
政令 第九条
関係相続人等(法第九条第一項に規定する関係相続人等をいう。次条第三項第二号において同じ。)は、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている関係遺言書(法第九条第二項に規定する関係遺言書をいい、その遺言者が死亡している場合に限る。以下この条において同じ。)について、遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求をすることができる。
2 前項の請求は、当該関係遺言書を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3 第一項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
4 遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書保管ファイルに記録された事項を表示したものの閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人(民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び相続の放棄をした者を含む。次条において同じ。)並びに当該関係遺言書に係る法第四条第四項第三号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
5 法第十二条第一項(第二号に係る部分に限る。)及び第二項の規定は、第一項の閲覧を請求する者について準用する。
あれ?結局、どこの保管所に対しても閲覧請求が可能ですね。
でもよく読むと、少し違いがあります。
法9条3項は「関係遺言書」の閲覧請求で、政令9条1項は「遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの」の閲覧の請求なんです。
この違いは、原本か否かということだと思います。
前者の閲覧はホカンカン又は職員の面前により行い、後者の閲覧は出力装置の映像面に表示する方法で行うと、省令22条に規定されています。
つまり、前者は原本のある保管所に対してしなければなしえず、後者は全国どこでもモニターによって閲覧可能ということで、条文が上記のように少し入り組んでいるのではないでしょうか。
そして、またわかりやすいパンフレットが・・・

最初からこれを載せておけばいいじゃん!!
まあ、条文にあたると理解が深まりますし…ねぇ。
まだ触れていない料金も書いてあるな…。
こんちきしょ―、負けずに条文にあたるぞ~。
4 第一項又は前項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
んー、もう現物見ましょう。
遺言者情報証明書の請求書(9条1項)です↓
そして、こちらが関係相続人等による遺言書の閲覧の請求書(9条3項)です↓




5 遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書情報証明書を交付し又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人並びに当該関係遺言書に係る第四条第四項第三号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
→ ホカンカンは、遺言書情報証明書を交付し又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、相続人、受遺者、遺言執行者に対して、遺言書を保管している旨を通知します。
さらに、省令48条によって、法9条1項二号(イを除く)及び三号(イを除く)に掲げる者にも通知することになっています。
これらの通知方法は、郵便又は信書便により書面を送付する方法により行うこととされています。したがって、それらしき事を言う電話等は、新しい詐欺の可能性があります。例えば、「あなたが財産を受け取れることが書かれた遺言書が法務局に保管されており、このたび、他の相続人によって閲覧がされました。内容をご確認いただくには手数料をお納めいただく必要がございますが、いかがいたしますか。」
条文上、このような電話が来ることはありません。お気を付けください。
今日のポイントは「 関係相続人等は、遺言者の死亡後、遺言書の情報を、どこの保管所でも閲覧できる!ただし、原本は保管されている保管所だけで可能。また、閲覧がされると、他の関係者にも郵便又は信書便で通知が行く! 」です。
今日は長かったですね。
明日以降も頑張ります。