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お見送りの雨

 

 被後見人さんをお見送りしてきました。

 

 葬儀は行わず、近い人だけ集まって荼毘にふされました。

 

 隣りの窯もその隣りの窯も稼働していました。

 

 平日の斎場には多くの方がいました。

 

 涙の止まらないご遺族もいれば、笑顔で棺の中にお別れを告げているご遺族もいらっしゃいました。

 

 職員は慣れた手つきで機械を操作し、遺骨を拾いました。

 

 骨の部位を説明しながら骨壺に収め、最後に、喉仏、頭骨を収めました。

 

 ご家族はお礼を言って骨壺を受け取りました。

 

 被後見人さんにとって、時間も、世界も、すべてが意味をなさなくなってしまったのだと思いました。

 

 ご家族にとって、被後見人さんの存在は、これからも意味があるのだと思いました。

 

 みなさんと言葉を交わし、斎場を後にしました。

 

 雨がたくさん降っていました。

 

 

 

 いつの日か、自分も、どこかの斎場で焼かれ、慣れた職員に喉仏を拾われ、壺に収まり、誰かが受け取り、誰かに見送られるのだと思いました。

 

 その時はもう、時間も、世界も、すべてが意味を持たないのだと思いました。

 

 せめてその日は晴れてほしいと思いました。

 

 雨はちょっと寂しい。

 

 

 

 髙野守道