日本司法書士会連合会主催、平成30年度未成年後見研修会に参加してきました。午前10時20分から午後5時30分までの長丁場でしたが、新たな知識や多くの気づきを得ることができた非常に良い研修でした。元児童相談所所長、大学教授、NPO法人代表(元家裁調査官、現篤志面接委員)らの講演に、司法書士による実例紹介も交え、未成年後見について学びました。
・未成年後見についての書籍は日本司法書士会が出している本くらいしかない
・未成年後見を専門にしている学者は皆無に等しい
現場から
・児童虐待とは、身体的虐待、ネグレクト、性的虐待、心理的虐待をいう
・児童相談所での児童虐待相談件数は、平成2年1,100件だったのが平成28年122,578件まで増加している
・平成28年度の内訳は、身体的虐待26%、ネグレクト21.1%、性的虐待1.3%、心理的虐待51.5%
・性的虐待は、言えない子が多く、実際はもっとあるはず
・それでも件数にすれば、性的虐待は1,622件ある
・つまり、それだけの数の子供たちが、そういう目にあっているという現実
・児童虐待によって子供が死亡した件数は、年間90人前後で推移(心中含む)
・報道は一部
・虐待の起きる家庭は、経済的困難と孤立が多い
・海外に比べて日本は、里親委託の割合が極端に少ない
・児童相談所の職員は代わってしまう
・退所した子供のその後を把握していないことがほとんど
・ずっと寄り添う大人が必要
・不法行為についての損害賠償義務など後見人の負担が多い
・未成年者の戸籍に後見人が記載される(成年後見は記載されない)
・未成年後見人のなり手が少ない
・平成27年の児童相談所所長による未成年後見人選任申立件数は52件
・未成年後見支援事業があるがほとんど知られていない
・報酬補助は、最大年24万円
・損害賠償保険料補助は、一人当たり年5210円
・専門職が補助を受ける条件は、①児童相談所所長の申立て②子供財産が1千万円未満
・児童相談所職員は、未成年後見制度や支援事業について、ほとんど知らない
未成年後見人になったら
・管理管理ではなく、自由な権利を使う練習が必要
・成人になった瞬間に財産を引き継いで、あとは自己責任と言っても無理
・本人は両親の生命保険金などで億を持っていることもある
・多額の資産を持つ子には、どこからともなく親族が現れる
・その反対はない
・知的障害がある子が成人になった場合、その後の支援に悩む
・一生後見、一生保佐では、結婚をした場合などに後見人が邪魔
・後見人の子育て経験が生きたと感じることはない(子育て経験は不要)
・親代わりにはなれない、なる必要もない
・あくまでも、側に寄り添って問題を解決してくれる人
・終了後も事あるごとに頼ってくれるのは嬉しいもの
全体を通して感じたのは、成年後見とは全く違うということです。
成年後見は人生の締めくくりで、未成年後見は人生の始まりではないでしょうか。
「後見終了後の本人がどうなるか」
未成年後見人がいる間は、未成年後見人がアレコレ動けます。しかし、後見が終わると、本人は1人で生きていくことになり、そのときどうなるか。多額の財産をいきなり持ってしまうケースもあれば、いきなり自分の生活費を稼がなくてはいけないケースもあります。管理できるのか、稼げるのか。親がいれば、子供が成人していても「無駄遣いするな」と注意が飛び、会社に遅刻するなと起こしてもらえます。後見人としての業務が終わったあとも、ちゃんと生活できているか、困っていないか、と本人に気を配ることもしてあげたい。する必要はないのかもしれないけれど。でも。
元児童相談所所長は「誰かずっと寄り添ってくれる大人が必要」と言いました。
NPO法人代表は「き 共感して。れ 冷静に。い 一緒に考える。」『きれい』という合言葉を教えてくれました。
大学教授は「事例が少ないので現場の情報がほしい」と訴えました。
皆さん口をそろえて「この分野はまだまだ未開拓。パイオニアになって開拓してもらいたい。」と言いました。
「どうやって大人になるのか。誰と生きていくのか。」元所長。
「別に司法書士にやってもらいたいわけではなく、やりたい人にやってもらいたい。」と教授。
「『あなたがいなかったら死んでたかもしれない。』と言われたことがある。」東北で震災孤児などの未成年後見に携わる司法書士。
自分にもできることがあると、信じる。
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