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小さな贈り物


 衝撃と興奮。
 そして驚嘆。
 暫し沈思黙考。

 キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』を読んだ。終末期医療のバイブルとも呼ばれる理由がわかる。読んで損はない。いや、それどころか、まだ読んだことのない人には読んでもらいたい。後見とか司法書士以前の問題で、優しくなれると思う。

 同書は、終末期患者を仲間外れにするな、ということを言っている。死を忌み嫌うあまり、終末期にある患者をも無意識的に遠ざけてしまい死を語ることなどタブーとしがちである。

 患者は、告知を受けなくても、いずれ、自分が終末期にあることを悟る。そうすると、周りが言ってくれないことに対し、不審や不満を抱く。死への恐怖とともに疎外感も味わうことになる。

 しかし、患者は、話したい。話を聞いてもらいたい。共感してもらいたい。

 以下、引用。

 「他の患者はみな、自分に関心をもってくれる人と話し合えることを喜んでくれた。ほとんどの患者はまず最初にそれとなく私たちを試した。死ぬ直前の数時間について、あるいは最期の看取りについて、本当にいやがらずに話してくれるのか、その点を確かめておきたかったのである。自己防衛のために自分のまわりに張り巡らした高い柵を、誰かに突き破って欲しかったのだ。」

 「現代のように、不安、水爆、急速な発展、何もかもが『大量』の時代にあっては、小さな個人的な贈り物がふたたび意味を持ってくるかもしれない。」

 他にも書き留めておきたいことは山ほどある。今回はとりあえず図書館で借りたが、購入したほうがよさそうだ。


 松井秀樹先生がトルストイとキューブラー・ロスという小さな贈り物をくれた。そしてキューブラー・ロスは、タゴール(インドの詩人)という贈り物をくれた。


 今度はタゴールの詩集を読もう。

 誰かにあげる小さな個人的な贈り物が見つかるかもしれない。