今年の初めに、信託について学ぶことを今年の目標の一つに掲げました。その目標達成に向けて、遠藤英嗣先生の家族信託の本を読んでいます。
率直な感想を申し上げれば、私が信託の仕事をすることは「ない」又は「極端に少ない」と思います。
理由
成年後見で出来ることが信託ではできないから。
成年後見で出来て信託ではできないこと。
・身上監護
・取消権を使うこと
信託で出来ない身上監護の例として、施設への入所契約や病院への入院申込みなどが考えられます。信託における受託者は、受益者の代わりに、それらの契約等をすることはできません。遠藤先生も著書の中ではっきり「信託の限界である」と書かれています。
同じように、後見相当の方が行った自己に不利益な行為に対し、受託者は取り消すことができません(取消権がない)。成年後見人であれば、取り消せます。
これらのことをどう考えるか。
いわゆる、親なきあと問題には、信託よりも成年後見制度の方が適している、と私は考えます。
信託契約公正証書の「信託の目的」に「…信託財産を適正に管理運用して受益者の生涯にわたる安定した生活の支援と最善の福祉を確保することを目的とする。」と書いてあったとします。
しかし、それは叶いません。受託者には、代理権がないので、例えば、本人の福祉のために何処かの施設に入ることを検討しても、受託者にはどうすることもできません。
この場合、成年後見人であれば、施設入所の契約ができます。
取消についても同様です。本人(受益者)が行った不利益な行為は、成年後見人であれば取り消せますが、受託者では取り消せません。
親なきあと問題を信託で考えると、途中で壁にあたります。
信託を正しく理解し、使える場面をしっかりと把握したいと思います。