「それじゃ、また。」
向かい合って、ペコリと頭を下げる。
クルリと向きを変え、歩き出した私の背中で厚い鉄の扉が閉まる。
ガチャリ。
絶対に開けさせないという宣告のような、低く重く冷たい鍵の音が廊下に響いた。
向こう側の音はもう聞こえない。
閉鎖病棟をあとにしながら、病室に差し込んでいた冷たくて暖かい春の日差しと、その日差しに照らされていた顔が心に浮かんだ。