気になる判例

広島高裁岡山支部平成23年8月25日判決

概要
1.A死亡
2.相続人X,Y,Zで遺産分割をしたい
3.X,Zで利益相反
4.Xに特別代理人甲弁護士選任
5.甲の特別代理人選任審判書に遺産分割協議書案が添付されていた
6.甲,Y,Zで同協議書案通りに遺産分割
7.同協議書案には、明記された遺産と「それ以外の遺産」をZが取得するとあった
8.ところが「それ以外の遺産」が多額であったため、よく調べなかった甲の善管注意義務違反による損害賠償を求めて提訴

一審、控訴審、ともに甲の善管注意義務違反を認め約1000万円の損害賠償請求を命ずる判決。

その後、上告され、受理されたようです。
受理後どうなったのか不明です。



特別代理人として、遺産分割ではありませんが相続放棄をしたことがあります。本当はすごい財産を持っていたなんてことになったら…コワイ…。

本件のように選任審判書に協議案が付いていたら、「裁判所見てるし、平気だろう。」と思ってしまいそうです。しっかり読んで、気になる記載があれば、納得行くまで掘り下げる必要がありますね。

言葉に気をつける。
特別研修で、我々研修生の書いた訴状や答弁書を読んだ弁護士さんのダメ出しが蘇ります。
「ある場所で長女とあり、ある場所では名前が記載されている。これは別人ですか?」
「1行目で『故障』とあり、途中で『不具合』とあり、最後は『瑕疵』になってる。違いを教えて。」
「私は教材を持っているから事案がわかるけど、実際は、何も知らない裁判官を納得させる文章を書かないと。」
なんとなく意味が通じていれば、あとはその時の感覚で文章を書いてしまいがちですが、弁護士さんの感覚は違います。強烈に覚えています。
まるで、竹刀での稽古中に真剣を振りかざし「本番ではこれで斬り合うんだぜ」と言われたような、冷たい感覚が背中を走りました。

言葉に気をつける。
書くときも読むときも聞くときも。
そんなことを思い出す冒頭の判例です。
「それ以外の遺産」なんだこれ?、と自然に思える感覚が求められています。