私は、字が汚いです。
書くのも、遅いです。
面談者の目の前で、自分のノートにメモをするとき、悩みます。どう書くべきか。
私は、汚い字で走り書きをしたら、それを見た相手が(ちゃんと聞いてんのかな?後で読めるんかな?)と思うのではないかと思い、できるだけ丁寧に書こうと思っていました。
ところが、ゆっくり書いてると、会話のリズムが悪くなり、思うように話が進まなかったりします。
かと言って、早く書けば、元々汚い字に拍車がかかります。
どうしたものか…。
と思っているところで、現役の新聞記者さんが取材をする様子を見る機会を得ました。
記者は、会話のリズムを崩すことなく相手を喋らせ、自分はすごいスピードでメモをしていきます。
す、すごい。これは、そういう訓練をしているに違いない!と思いながら、そのメモを見たのですが…。
まったく読めない!ひょっとして、速記ってやつかな?と思い、聞いてみたのですが、特別そういう類のものではありませんでした。失礼を承知で、これでは読めないのでは?と聞いたその答えに、私は深く頷きました。
「私だけが読めればいいんです。」
新聞記者にとって、足で稼いだ取材はおそらく「宝」でしょう。ことに、スクープ記事の取材メモだったら、お金に変わるものです。
その記録を、覗き見されたり、落としてしまったら、取り返しのつかない大失態です。でも、その取材メモを見た人、拾った人が読めなかったら…。
目から鱗でした。
法律家にする話は、人に聞かれたくない話が多いです。その内容を、誰もが読める丁寧な字で記録し、それを紛失したらどうなるか。
これからは、相談者の目の前で堂々と汚い字で走り書きをし、怪訝な顔をされたら「あなたを守るためです。」と、お伝えすることにします。
自分には読めて他人には読めない字。
プロの技を教えていただいた気分です。